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【インタビュー】日本語教室ボランティアに聞いてみました。自分たちにできること、できないこと

 水戸市国際交流センターでは地域のボランティアによる日本語教室を毎週火~土曜(午前中)に開催しています。また、以前から要望の多かった平日夜の日本語教室も2022年4月からスタートしました。コロナ禍でも施設貸出し制限期間を除き、日本語教室は継続してきました。これらの教室の担い手は市民ボランティアの方々。経験のないまま日本語指導に携わることは難しいため、当協会では18年に「初級日本語ボランティア養成講座(*1)」を開催しました。
 今回は、この講座を修了して、今もボランティアとして日本語教室で活躍している3人の方にお話を伺いました。皆さんそれぞれ別のボランティアグループに所属していますが、今でも年に数回、講師を含めた当時の養成講座の仲間でミーティングを開催して、連携を深めています。

実際に日本語ボランティアを始めてみて

■普段なかなか接することのない、地元に住む外国人とコミュニケーションがとれて、逆にその人たちの考え方や習慣を知ることができて、とても充実した活動だと感じる。なかには、もう数年にわたって教室に来て、話をしていく学習者もいる。

■ボランティアとして週に1度、2時間の活動だと思ったら、授業のため数日、4~5時間の準備が必要だった。所属の教室の方針が「会話重視」となり、文法のまとめなどの授業の準備が軽減されたのは助かった。

■自分は自然に話している日本語を、外国人にやさしく、わかりやすく教えることは、思った以上に難しかった。日本語のルールや用法など、まだまだ知らないことも多い。

■自分が英語を話せるので、旅行先は英語圏を選ぶことが多いし、(日本語ボランティアとして活動する前は)英語を話す外国人とばかり話しをしていた。でも、ここの日本語教室で活動するようになって、英語ができない人とも「やさしい日本語」で、段々とコミュニケーションがとれるようになってきた。中国人に日本語を教えながら、休憩時間には、逆に中国語を教わって、楽しい時間を過ごしている。

金井良吉さん
(にほんごボランティアグループ・オルビス)
「別のボランティア活動をやめて時間ができたので、スペイン語の勉強を始めていたんです。『スペイン語を話す機会があるかな』と国際交流センターを訪れた折に、養成講座のことを知って参加することにしました。」    
首藤啓三さん 
(ソフィア日本語教室) 
「英語に不自由はないし、元々『言葉』に興味があったんです。妻が水戸市報を見て、この養成講座があることを教えてくれて。教えることも好きなので、日本語ボランティアになりました。」                

日本語の学習者も様々

■学習者のこれまでの教育環境は様々。これまでに、外国語学習をしたことがあるかないかだけではなく、それ以前に、ノートをとる習慣がない、筆記具を持ってこないなど、学校教育での勉強のやり方を知らないケースもある。読み書きはできなくとも、聞いたり話したりする能力に長けている場合もある。それぞれに、個別に対応している。

■「仕事先の朝礼で週1回、日本語で話さなければならない。笑われたくない」と、そのための練習を、きちんとする学習者がいる。ちょっとストレスになっているようだが頑張っている。

■同じ初級の日本語レベルでも「これからもずっと勉強してレベルアップをしたい」という学習者と、「2,3か月しか来られない。簡単な日常会話ができればいい」という学習者を同時に教えることは、(彼らのモチベーションが違うので)難しい。

■学習者が2~3回で来なくなってしまうと、本人にやる気がないのか、こちらの教え方に問題があったのか、ニーズをつかみきれなかったのか、などと考え込むようなこともある。

■日本語を勉強しようと教室に来るのは、生活面の余裕があったり、学習意欲のあったりする人で、望んでも来られない人たちもいると思う。

日本語学習者との関わり方について

■教室のある日には、学習者と仲良くしているが、お互い、友だちをつくりに来ているわけではないので、あまりプライベートなところには立ち入らないようにしている。そもそも、片言の日本語では、自分の生活上での問題や愚痴を言ったり、聞いたりすることができないので。学習者も、そこは割り切っているのかもしれない。

■例外かもしれないが、音楽好きの学習者を、自分の所属するオーケストラに誘ったこともあった。

■日本が大好きという学習者が、日本各地の面白い場所や風光明媚なところなどの情報を持っていて、それを教わったりすることもある。

平岡古都さん 
(メサフレンドシップ) 
「友人が日本語ボランティアをしていたことが、養成講座を受講しようと思ったきっかけです。」

にほんご水戸の部屋」~木曜日の夕方・夜の日本語教室~
水戸に住む小学生から高校生までの、外国につながる子ども(*2)や大人たちを対象に、2022年4月にスタートしました。常磐大学の飯野令子准教授を中心に、中学生から高校生や大学生もボランティアとして参加しています。金井さん、首藤さんのお二人も、この教室に参加しています。


■初めに、何をどう指導する、といった形を作らず、ここに集まってくる子どもたちの個性や、雰囲気を見ながらのスタートだった。今のところ、宿題を見たり、補習をしたり、ゲームをしたりして活動が広がっている。まだ子どもたちのニーズをきちんと探り当ててはいないけれど、子どもたちは休むことも少なく、楽しみに来てくれている。親が仕事で忙しかったり、放課後に他に行き場所がなかったりする子も来ている。

■ボランティアで参加している高校生が、逆に学習者から英語を教えてもらって勉強している。面白い流れになってきたと思う。

日本語の学習機会について

■外国につながる子どもたちが、日本語もままならないまま学校に通うことも多いなか、教員の過重労働や人員不足もわかるが、学校の教育現場でもっと日本語指導ができないものかと思う。小、中学校には日本語の巡回指導もあるが、圧倒的に足りていないようだ。

■ボランティアで補習程度のケアはできるが、受験での教科指導まではできない。高校になると義務教育ではないので、公的な日本語指導を受けることはさらに難しくなるし、高校の場合は単位制なので国語科も含め必修で単位を取らなければならない。ましてや、ボランティアによる日本語指導を受けた時間を、単位に含めることもできない。学習意欲のある若者が、日本語が出来ないというだけで高校などに入れず、教育を受ける機会がなくなることが残念。

■日本語ボランティアが、学校の教育現場と連携をとる市町村もある。ただ、ボランティアとして、どこまで指導するかを見極めるのは、難しいと思う。

最後に

■日本語ボランティアは「語学としての日本語を教える」というより、日本の習慣や文化など、日本での暮らし方を伝え、それに付随する必要な言葉も教えるということが、大切だと思う。外国から来て、慣れない社会でソフトランディングできるようサポートできたらいいなと思う。

■日本語教室がボランティア任せになっているのではないか、という気はする。行政がそれを担うべき、という考え方もあるが、決められたテキストで、学習内容も指導方法もひとつにまとめてしまうと、学習経験や習慣の全く違う個々の学習者に対応できない。もし行政主導の日本語教室になったら、指導資格がないボランティアの参加も難しくなるのではないかと思うと、悩ましい。

■自分が日本に来たばかりの外国人だったら、こうした地域の日本語教室でボランティアに日本語を教えてもらえる場所は、居心地がいいと思う。そうした場が提供できるように、これからも活動していきたい。

(*1)初級日本語ボランティア養成講座は22年10月にも開催。
(*2)「外国につながる子ども」とは、外国籍の子どもや、(両方または片方の)親は外国籍だが日本国籍を有する子どもなど、本人の国籍を問わず、様々な形で日本国外にルーツを持つ子ども・若者たちの総称で使われている。

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