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【インタビュー】水戸ユネスコ協会~地域の文化活動を国際交流へ

水戸ユネスコ協会は、国際連合教育科学文化機関(略称:ユネスコUNESCO*)の理念をもとに地域とかかわり、教育文化活動・国際交流活動を行う民間のNGO団体です。
今回は、水戸ユネスコ協会会長 林和男さんにお話を伺いました。
*United Nations Educational Scientific and Cultural Organization

日本に300近くあるユネスコ協会の一員として、1981年年から活動しています

今から41年前、当時水戸市には、現在のようなきちんとした図書館がありませんでした。そこで、綿引ツネコさん(水戸ユネスコ協会初代会長)という方が、地域の子供たちの読書活動を推進するため、自宅を図書館として開放しました。この活動に賛同した茨城大学の先生や地域の人々が中心となり、より充実した図書館の設立を目指して、ユネスコ民間組織として1981年10月26日に水戸ユネスコ協会を創立しました。そして翌年2月に、公益社団法人「日本ユネスコ協会連盟」から正式に設立を許可されました。ユネスコは、世界に3,000~4,000の協会があり、日本にも300近くのユネスコ協会があります。茨城県には5つの地区ブロックがありますが、私たちは県央で、県ユネスコ連絡協議会の一員として活動しています。

協会主催の絵画展の審査をお引き受けしたのが、入会のきっかけです

私が笠間高校の校長を務めていた時に、水戸ユネスコ協会主催の「絵で伝えよう!わたしの町のたからもの絵画展」という小中学生対象の絵画展の審査委員をさせていただき、そこで水戸ユネスコ協会への加入のお誘いを受けました。 私自身の専門が美術だったこともあり、絵画の審査なら大丈夫かなと思ってお引き受けしたのが、入会のきっかけになりました。


テーマを持って、地域のイベントに参加しています

ユネスコというのは国連教育科学文化機関ですが、それぞれの地域のユネスコ協会が、本部の進めている活動をそのまま行っているわけではありません。水戸ユネスコ協会は、どちらかと言うとボランティア団体、NGOでもありますので、我々のできること、力の及ぶ範囲、で活動しています。一つは、友好親善活動。「NGO茨城の会」主催のイベントや、水戸市の主催する「こみっとフェスティバルin 水戸」、「水戸市環境フェスティバル」など、地域のイベントに参加しています。その都度、環境について考える、国際交流について考える、などのテーマを持って、展示や親子に向けたワークショップを行っています。

国際協力・国際貢献の活動に協力しています

「世界寺子屋運動*」という活動があります。日本のいろいろな機関やボランティア団体が寄付をして、アジア・アフリカなどで教育機会に恵まれない地域に学校を作り、教育を充実させることで、平和に繋げていくという運動です。最終的に、ユネスコは平和活動ですので、そういう教育充実のための募金活動や寄付活動に対して、私たちもわずかながらお手伝いをしています。あとは、大きな災害が発生した時、最近ではパキスタンで水害が、ネパールでは大地震がありましたが、茨城県国際交流協会やNGO茨城の会の呼びかけで、我々も一緒になり、街頭募金を行いました。また、在県の外国人を対象に、水戸市国際交流センターで日本料理教室を開催したり、文化交流の一環として「梅染め」の体験講座を行ったりして、国際理解を深める活動をしています。
*国際識字年(1990年)をきっかけに、(公社)日本ユネスコ協会連盟によって始められた運動。書き損じはがきを集めて、世界の読み書き・計算ができない人々への「学びの場=寺子屋」づくりをしている。

「絵で伝えよう!わたしの町のたからもの絵画展」は23回を数えます

水戸地区の小学校・中学校の子どもたちの作品を預かって、毎年12月に水戸市の常陽銀行本店ロビーに展示させてもらう「絵で伝えよう!わたしの町のたからもの絵画展」は、昨年で23回目になります。地域の文化財や、景観遺産、伝統行事などを大切にする心を育むことを目的としています。コロナ禍で1度だけ中止しましたが、2021年には再開しました。応募作品の点数はさすがに減りましたが、内容はとても見応えがあり、ちょうどクリスマスの時期で、親子連れなど、たくさんの方が見に来てくれました。

定期的な「環境学習会」を通じて、SDGsの達成に関わっていこうと考えています

SDGs*「持続可能な開発目標」の達成に関わる活動としては、環境保全に関する活動「環境学習会」を大体ふた月に1回、開催しています。会員の中にも、この件について大変詳しい方や専門の方がいらっしゃいますので講義形式で話を聞いたり、大学が実施している環境関係のプログラムにオンラインで参加したり、いろいろな形で、環境についてユネスコとして関わって、SDGsの目標達成に繋げていこうと思っています。
*SDG’s: Sustainable Development Goals 2015年に国連サミットで採択された、持続可能な開発のための17のゴールと169のターゲットを掲げ、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すことを目標としている。

「梅染め」を社会にどう活かしていくか、という活動が始まりました

2019年秋頃から始めた「梅染め」プロジェクトが、今年で丸4年目に入ります。「梅染め」は、偕楽園の梅の剪定枝、つまり剪定した後に廃棄される梅の枝を使う草木染めです。廃棄物の再利用、ものづくりの推奨、そして茨城・水戸の魅力向上に繋げるという、いろいろな目的を持ったプロジェクトです。おかげさまで、現在、水戸市内の高校・大学・専門学校など、複数の教育機関と連携して、今後「梅染め」を社会にどう活かしていくか、という活動が始まりました。 今年の3月1日から14日まで、初めて本格的な展覧会を開催します*。これまで、水戸ユネスコ協会としての展示はしていましたが、今回は、複数の機関や学校が参加して、「梅染めって何だろう」「梅染めをどう使って、茨城の魅力向上にどう役立てよう」などのテーマを、広く県民のみなさまに投げかけようと考えています。

*梅染め(草木め)の展覧会 「見つけた!茨城・水戸の魅力~梅染めの明日~」
会期:2023年3月1日(水)~14日(火)
平日のみ 10時~17時
場所:茨城新聞社みと・まち情報館
(水戸市南町2丁目)  

今後は「ものづくり」を通じた国際交流ができればと考えています。

新型コロナウィルスの流行した当初、不安もありましたが、だからといって水戸ユネスコ協会として何も活動しないわけにはいかないという思いがありました。まず、コロナ禍でもできる活動として、オンラインで会員向けの情報発信や、環境学習会、「梅染め」プロジェクトの話し合いなどを進めていました。「梅染め」に関しては、厳重な感染症対策を行いながら、対面での講習会も続けてきました。現在は、少しずつ新型コロナウィルスの位置づけも変わってきていますので、状況が落ち着いてきたら、一般の市民の方向けのイベント・講習会などを再開したいと思っています。
また、私たちの「梅染め」や、常磐大学の先生のご指導の下、フィリピンで桑を育て蚕から糸を紡いでつくられている絹織物、オーストラリアのロータリークラブが支援しているパプア・ニューギニアの木工製品など、「ものづくり」を通して、環境問題について考えたり、フェアトレードプログラムに関わったりすることで、国際交流が実現すればと考えています。

 

地道な文化活動を国際交流に。興味がある方は、ぜひご参加ください。

水戸ユネスコ協会は、創立から40年経ちますので、会員の高齢化も進んできています。高齢ゆえに活動する上で難しいこともあるため、補っていただける、あるいは助けていただける若い方が増えていくとありがたいです。仕事をしながらボランティア活動を行うことは難しいと思いますが、協会には様々な年齢層、職種、また外国の方もいらっしゃいますので、人と人との繋がりが広がると思います。今は個人の時代とも言われていますが、悩みを相談できるような新しい関係も築けるかもしれません。私たちは、市民同士の良好な関係や平和な環境を実現するために活動しています。たとえば、文化活動。私たち自身が、専門の方の指導を受けて勉強しながら、日本料理や草木染め等の日本文化を、地域の方々や外国の方へ伝える地道な活動を国際交流に発展させていきたいと考えています。このような活動に興味がある方は、ぜひご参加ください。

 

水戸ユネスコ協会の詳しい活動については、こちら

■入会方法:下記の連絡先へご連絡いただければ、        入会申込みの資料をお送りいたします。       (入会前に定例会の見学も可能です。)  
連絡先:林 和男  
電 話:090-5761-9790  
年会費:一般 3,500円 青年会員(35歳以下) 1,000円

水戸の名産「梅」を使ってSDGsの実践や、茨城・水戸の魅力向上、また国際交流に繋げたいというお話を聞いて、「梅染め」の可能性の広さに驚きました。また、このような日本のものづくり文化が、これからどのように社会に活かされていくのか楽しみです。

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