ニュース&トピック

インタビュー ~東日本大震災後の外国人に聞く~ <ドイツ>

渡邉ロスビタ(ドイツのベルリン出身)

水戸市在住、ドイツ語講師

     

国旗:色はナポレオン戦争の時の軍服、黒地に赤の襟、金ボタンをシンボルカラーにしたという由来。または黒は勤勉、赤は情熱、金は名誉を表すとも言われる。


*来日のきっかけを教えてください

11歳のときに初めて観たオペラが「蝶々夫人」で、「日本は面白そう!良い国だなあ。」と興味を持ったのがきっかけでした。ドイツの大学では、ドイツ文学と日本文学を学びました。その当時、ドイツで日本について勉強する人は少なかったので、私を「変わってる」と言う人もいましたね。(笑)でも勉強を続け、東京の大学に留学しました。

*「蝶々夫人」がきっかけだったのですね。日本に来て驚いたことはありましたか

留学前に日本について勉強していたので、大体イメージ通りであまり驚きませんでした。日本のイメージといえば、桜、富士山、芸者や舞妓、日本人は皆やさしくてニコニコしているなどですが、でも一つ驚いたのはドイツと日本の住まいの違いでした。ドイツの家は石で出来ているので、夏は涼しく、冬は全館暖房や暖炉で家全体がいつでも暖かいのです。また、300~400年前に建てられた古い家を直しながら住んでいて、それがとてもきれいな町並みを作っています。

日本の家は通気性が良いとよく聞きますが、冬は寒いし夏は暑くて、ドイツに比べたら住みにくいと思いました。私は10年位前に家を購入しましたが、家も土地も価格が高いので、ドイツで同じ金額を出したらもっと良い家が建つのにと思いました。

*日本人のご主人と結婚されていますが、国際結婚について何かアドバイスがありましたらお願いします

留学が終わる頃に結婚することになったのですが、私の家族は遠い日本での結婚に反対したかったと思います。でも、もう私は決めていましたし、幸い主人は頼りがいのある人でしたので家族も賛成してくれました。国際結婚の場合どちらかの国で生活することになりますが、夫が外国で暮らすよりも、私のように夫の国で生活する方が、仕事の面でもいいのではないかと思います。

私には3人の子どもがいますが、子育てに関してはバイリンガルにしたほうがいいと思いますね。子どもを育てるとき、私はドイツ語で、主人は日本語で子どもに話しかけるように徹底しました。3歳くらいまでは子どもが私に日本語で話しかけてきても分からないふりをしました。食卓では、ドイツ語と日本語が飛び交い、家族で話すとごちゃごちゃですね。(笑)

ある外国人の友人は日本に住んでいるので、子どもとの会話は日本語にしていましたが、大きくなっても母親の国の言葉が話せないのは寂しいと言っていました。

*昨年の東日本大地震の体験をお聞かせください

娘と私は宇都宮で山登りをしていました。突然トラックか戦車が走ってくるような凄い音がしたので私たちはしゃがみこんでしまいました。長くて強い揺れで本当に驚きました。

揺れが収まってから山を下りたら、宇都宮周辺の車は普通に走っていたので、レストランで夕飯を食べて車で水戸に向かいました。でも途中からは停電になり、道路沿いの壁が崩れていて異様な雰囲気でした。御前山の橋のところでは、落ちたらどうしようと不安でしたが、渡らないと帰れないので恐る恐る渡りましたがぞっとしました。

水戸に着いたのは夜の8時頃でした。茨城大学前の停留所におばあさんが立っていましたが、「バスに乗れたかな、声をかければ良かったのかな。」と通り過ぎてから思いました。

家に着くと台所の食器は壊れ、たくさんの本が散乱していました。水槽の水もこぼれて水浸し状態で何匹かのグッピーが可哀想な事になっていました。私は怪我をしないように携帯の明かりで歩きましたが充電がすぐ切れてしまうので、ろうそくを数本つけました。

*ご家族との連絡はとれましたか

地震の時、主人は仕事でイギリスに行っていました。心配した主人から電話がありましたが、私はまだ津波や原発のニュースを知らなかったので、「水槽がピッチャピッチャパッチャパッチャやってるよ」と馬鹿な事を言っていました。

二人の息子が東京と千葉に住んでいますが、千葉の海岸近くの障害者施設で働いている息子は、100メートル近くまで津波がきて、津波との闘いだったようです。無事で良かったです。

私と娘は春休みということもあって、長崎の教会に一週間程避難しました。教会の方々がとても温かく向かえてくれたので嬉しかったです。その後、私と主人は水戸に戻りましたが、子どもたちは原発の心配があるので6月頃まで水戸には来ないようにしました。

*大震災で困ったことや感じたことはありますか

震災後、携帯や電話が使えないことが精神的に辛かったし、不便でしたね。それから、原発のニュースを聞いたドイツの家族が心配して、早くドイツに帰るようにと言ってきましたが、自分だけ帰るわけにはいかないので残りました。後でドイツの家族から「あなたが日本に残って何か役に立つことができたの?」と聞かれ、返事に困りました。でも、こんなときに外国人が皆、母国に帰ってしまったら、逃げるところがない人たちに申し訳ないですね。私達が日本に残ることで、諸外国の人たちも日本は大丈夫なんだと思うでしょう。

*原発についてどう思いますか

今まで原発は良いエネルギーだと思っていました。でも、今回の福島原発事故以来、日本は特に地震が多い国なのでもっと研究して自然電力を考えた方がいいと思います。ソーラーパネルもいいですがまだまだ高価ですしね。

ドイツは何年かしたら原発を止めることが決まっています。そうすると、不足する電力への対応として、フランスから電力を買うことになるのだと思います。「原発を止めることにしても、不足の電力は、自分の国でなんとかしたらいいんじゃない。」と私は思います。

*将来の夢はなんですか

主人が退職したら、今までより時間に余裕ができると思うので、妹の住んでいる南ドイツに長期滞在できたらいいなと思っています。南ドイツは素敵な町なんですよ。主人は寒い冬が苦手なので、暖かい季節に二人でドイツに行って楽しみたいですね。

*ドイツに旅行するときのお勧めを教えてください

好みにもよりますが、建築や町並みに興味のある人は南ドイツがいいですね。バロック様式やゴシック様式のきれいな教会や建物が見所です。また、歩行者天国になっている広場を囲むように、伝統的な古い家や市役所などが建ち並び、花で飾られた町並みはとてもきれいです。

音楽や文学に興味のある人には、北ドイツがお勧めです。美術館や博物館、オペラでしたらベルリンのような大きな町がいいと思います。山登りでしたら南アルプスですね。

食べ物だったら、豚肉は日本より美味しいと思うので食べてみてください。あとは全粒粉で作る歯ごたえのある黒いパンは酸味があってとても美味しいです。

*今日はどうもありがとうございました。

2012.1.31水戸市国際交流センターにて

« 一覧へ戻る

ページトップへ