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ネパール人が水戸に多いのは、なぜ?~茂垣・ロメシュ・シュレスタさんに聞きました

現在、茨城県の在留外国人は約78,000人。ベトナム・中国・フィリピン籍の方が多く暮らしています。一方、対前年増減率に目を向けると、インドネシア・ネパール籍の方が20%以上増えています。水戸市には、約3,800人の外国人市民が暮らしていますが、そのうちネパール籍の方は204人で、県内最多です。どうして、多くのネパールの方が水戸に住んでいるのでしょう?水戸に暮らして22年。ネパールのカトマンズ出身、茂垣・ロメシュ・シュレスタさんにお話を伺いました。  

来日したのは2000年
当時は水戸でネパール人に会ったことがなかったですね

1998年にネパールで結婚した妻の実家が水戸だったので、日本に来た当初から水戸に住んでいます。その頃は、水戸でネパール人に会ったことが、全くなかったですね。国際交流センターに来ても、ネパール人は、1人もいませんでした。もしかしたら茨城大学に留学生がいたかもしれないけれど、会ったことはありませんでした。

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水戸には、飲食店を経営して、家族と暮らしているネパール人が多いと思います

水戸に200人ぐらいネパール人がいるんですか?ちっちゃい国としては多いですね(笑)。今、水戸にいるネパール人は、飲食店をやっている人が多いと思います。1店舗にスタッフが3~4人いて、それぞれが3人家族だとしたら、店が10軒あれば100人を超えちゃいますからね。あとは学生が50~60人くらいいますよね。そういえば最近は、特定技能(*)で来日してホテルなどで仕事をしている人も増えてきていますね。

*特定技能: 2019年に開始された日本の在留資格。少子高齢化の進展で深刻化する労働力不足に対応するために設置された。一定の技能及び日本語能力基準を満たした外国人は特定技能としての在留を許可される。

英語・ネパール語・インドのヒンディー語・パキスタンのウルドゥー語が話せます

ネパールでは、イギリスの教育制度が導入されたこともあって、英語も話します。子どもの学校も、イギリス式のボーディングスクール(*)が多くて、そこに子どもを預けて、両親が出稼ぎに行くケースも多いですね。もっとお金持ちの人は、インドの学校に行くこともあります。でも、ネパールには、学校に全然行けない人もいるし、田舎の方には学校がないところもあります。僕は英語と、インドのヒンディー語、パキスタンのウルドゥー語、それとネパールのいろいろな民族の言葉がわかります。ネパール語やウルドゥー語のほとんどは、サンスクリット語(**)がベースなので、言葉としては近いんですよ。

*18歳までの生徒が、共同生活しながら勉強する全寮制の学校。
**インドなど南アジアおよび東南アジアにおいて用いられた古代語。日本では梵語(ぼんご)とも言う。

ネパール人にとって、日本は出稼ぎ先の一つになっています

ネパールは、農業・観光産業のほかには、特に産業がないんです。だから、インドへ行って働く人が多い。インド料理店を経営するネパール人が多い理由はここにあります。インドのほかにも、中東のドバイ、サウジアラビア、クウェート、それとカタールなどに建設の仕事で出稼ぎに行きます。日本は、仕事をしながら自分の家族と一緒にいられるという制度があるし、義務教育のおかげで学校にかかる費用はネパールよりも安い。日本で働いているネパール人の多くは、「日本で永住権を取って家族を呼び寄せて一緒に生活すること」を目指していると思いますよ。ただ、言葉の壁が大きいから、それなりに勉強しなければなりませんけれど。

来日した頃は、日本語はチンプンカンプンでしたね(笑)

ネパールにいた頃は、妻とは英語でコミュニケーションをとっていました。だから僕も、日本に来たときは、日本語はチンプンカンプン(笑)。今でも、日本語は難しいと思いますけれど。日本に来て、最初の1年半ぐらいガソリンスタンドで働いていたんです。当時、高校生のアルバイトがいっぱいいて。若い人って、いろいろ教えてくれるんですよ。僕も若かったから(笑)。日本語でコミュニケーションをとれるようになったのは、それがキッカケかな。もちろん妻にも、たくさん教えてもらいましたけど、教えてもらっても、実際に会話をしないと上達しませんよね。

ネパール人に、通訳を頼まれたり、相談されたりすることがあります

僕の場合は、最初から住むところもあったし、周りの日本人がなんでも教えてくれたので、努力しなくてもすぐに日本の生活に慣れることができたんです。でも、日本に来て、知り合いが誰もいなかったら、きっと苦労するだろうなと思います。特に言葉で。先日も、知り合いの奥さんが手術をするというので病院に行って通訳してきました。ただでさえ医療の専門用語は難しいのに、日本語ができなかったら、お医者さんが何を言っているのか全然わからないですからね。お医者さんの方も大変でしょうし。あとは、運転免許を取る時、市役所で手続きをする時、入管(*)で在留資格を更新する時などに、通訳を頼まれたり相談にのったりしています。他には、税金関係のこととか、国民健康保険料の支払いについて相談されることもあります。

話は違いますが、日本は、住所を定めたその日から国民健康保険料がかかってきますよね。病院で治療してもしなくても。こういう制度は、ネパール人にはなかなか理解しづらいかな。ネパールは日本のような国民皆保険制度ではなく、保険は個人で加入するので。健康保険については、日本が、一番しっかり制度ができている国なんじゃないでしょうか。

(*)出入国在留管理局。在留資格の認定や在留カードの更新などを行う。

水戸は暮らしやすくて、人が、優しいんですよ

この10年くらいの間に、たくさんのネパール人が水戸に来ていますけれど、水戸に1回来ると、水戸を出ない人が多いかな。それか、出てもまた戻ってきちゃう。不思議なんですけど(笑)。水戸は暮らしやすいんじゃないですかね。東京よりも家賃も物価も安いし。水戸は東京に近くて便利だけど、人はなんとなくのんびりしていて、心に余裕があるような感じです。人の話をよく聞くし。人間って、優しい気持ちは誰でも持っているけれど、時間に余裕がないと、優しさが出せないんですよね。他の人のための時間が作れないというか。余裕がある人って優しいんですよ。

家族も仕事に就けることが、水戸で暮らす大きな理由だと思います

もうひとつ僕が思うには、水戸には仕事があるんですよね。旦那さんの仕事だけじゃなくて、奥さんの仕事が。東京あたりには、もちろん仕事はたくさんあるけど、来日したばっかりで日本語がまだ上手じゃなかったら、職場まで通うのも大変でしょう?それが、水戸の近郊にある食品関係の大きな会社は、自分で水戸駅まで行けば、迎えにきてくれるんです。そういう会社がほかにもけっこうあって、知り合いの奥さんも、水戸に来てまだ1か月なのに、もう仕事に就いてるんです。ということは、その会社は働くのに日本語がいらないっていうことです。これは、大きいと思いますね。

ロメシュさんは、現在、茨城大学の近くで飲食店を経営しています。以前は、水戸市近郊のALT (Assistant Language Teachar) として英語を教えていました。一方、英語・ネパール語・ヒンディー語・ウルドゥー語の通訳として民間の団体に登録、外国人の方たちをサポートしていらっしゃいます。もとより日本語は難しい言語と言われています。「まず言葉から」と外国人が日本語を習得できるような場は、もちろん大切です。とは言え「たとえ言葉ができなくても就ける仕事があること」も、生活の上で大きな安心につながるということを、ロメシュさんのインタビューで知りました。就労や教育といった生活基盤の大切さ──外国人の方も暮らしやすい社会のあり方について、あらためて考えさせられるインタビューでした。

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