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始まりは日本のアニメ。外国人サポート会社を立ち上げて、さて次は?~メガン・メンドーザさん

 ひたちなか市に住んで約10年。Meghan Mendoza (メガン・メンドーザ)さんは、アメリカ・ニュージャージー州の出身です。おばあさんはスペイン語、ご両親は英語を話し、お姉さんはイタリア語を学んでいたという家庭で育ち、自身は約1年間フランスに留学した後に、日本語を学ぶためにミドルベリー大学(米国最古のリベラル・アーツ・カレッジのひとつ)に進学。2010~2011年には、国際基督教大学(ICU)で日本語と日本文化を学びました。大学卒業後、2012年に来日。ひたちなか市で英語教師として勤めるかたわら、日常の手続きなどで困っている外国人の友人をサポートしていました。友人以外でも、困っている外国人がもっと楽に暮らせるようにという想いで、2022年4月、日本に暮らす外国人をサポートする会社を設立しました。

日本語を学んだきっかけは、日本のアニメでした

 小さい頃からの親友がアニメが大好きで、ある日、家に遊びに行ったら、彼女が、主人公の眼がすごく大きい(笑)アニメを見ていたんです。それが<ドラゴンボール>。面白いなあと思って、それから私もアニメが好きになり、父が日本出張のお土産にアニメのDVDを買ってきてくれるようになったんです。<鋼の錬金術師>とか<犬夜叉>とか。最初は、日本のアニメだとは知らなくて、英語音声で見ていたんです。でもある時、英語字幕版で見てみたら、(日本語の音声が)何を言ってるのか全くわからなくて。「これが日本語なんだ。じゃあ、ちょっと勉強してみよう。」と思ったのが、日本語を学ぼうと思ったきっかけです。

TVドラマを見たら、発音や流れが綺麗になりました。ドラマはおススメの教材です

 日本語の勉強を始めてみたら「オーマイゴッド!」でした(笑)。文法、漢字、ひらがな、カタカナを覚えるのが本当に難しかったです。フランスに留学していた時には、滞在3か月目くらいでフランス語が聞き取れるようになり、色々なことが理解できるようになったんですけれど、日本語は、そうはいかない。

 ICUに留学中、一度アメリカに帰国した時に、ミドルベリー大学の日本語の夏学校に通ったんです。そこは入学する時に「1か月間、日本語しか喋りません」という契約書にサインしなければならないくらい厳しいところ。でも、集中して日本語を学べてよかったです。自分の部屋でも、音楽もTVも日本語のもの。特にドラマをたくさん見たことで、日本語の発音や流れが綺麗になりました。本当の日本人同士の交流の様子や話し方が、すごく勉強になりました。見たドラマのタイトル?もちろん覚えています。<花より男子>と<花ざかりの君たちへ>です。小栗旬、大好きです(笑)。日本語は今でもまだ勉強中ですね。毎日毎日、新しい言葉や漢字を学んでいます

偶然、住むことになったひたちなか市は、実家のある町に似ています

 日本で働こうと思って、偶然ウェブサイトで見つけたのが、ひたちなか市の英会話教室だったんです。ICUに通っていた頃は「茨城県」を全く知らなかったのですけれど。でも住んでみたら、ひたちなかは私の実家のある街(ニュージャージー州スプリング・フィールド)に雰囲気が似ていたんです。静かで小さくて。それと、実家からニューヨークまでバスで40分ぐらいなんですけれど、ひたちなかも電車やバスですぐに東京に行けるところも似ています。海浜公園があるし、町の近くに海や山があって。私はハイキングや海で泳ぐことが好きなので嬉しいです。あと、お祭りも楽しみにしています。

 水戸の偕楽園もきれいですね。弘道館も面白いです。私の旦那さんの先祖がサムライだったそうで、徳川家康のことなど歴史を教えてくれます。日本の歴史は、ICUに通っていた時に英語で授業を受けて、豊臣秀吉について作文を書きました。大阪に行ったときには、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に関係がある場所がたくさんあって、面白かったです。

休日は、自然を楽しみます。それと、時々、ラグビーの試合に出場しています

 旦那さんが自然が好きなので、休日はツーリングを楽しんでいます。この前は、会津若松まで紅葉を見に行きました。花貫渓谷、花園渓谷、あと袋田も紅葉がきれいですね。私は旦那さんのバイクの後ろに乗っているので、左右の風景をたっぷり楽しんでいます。 

 それと、フランスにいた頃にラグビーをやったことがあって、ずっとラグビーをやってみたいと思っていたんです。この辺には女子ラグビーのチームがないので、今は40歳以上の男性のチーム「茨城魅惑ラグビーフットボール倶楽部」というところに所属しています。仕事でなかなか練習に参加できませんが、時々、試合に出場しています。このチームのメンバーの紹介で、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップに関わる仕事もしたんですよ。

外国人にとって、ちょっとだけシステムが足りていないな、と思うことがあります

 私が日本に住み始めた頃と比べると、今は、外国人をサポートする日本人が増えてきたと感じています。それはとてもいいことだと思います。

 でも、たとえば、ウェブサイトによっては、自分の名前を入力する時に、アルファベットではダメで、カタカナで入力しなければならなかったり、カタカナの長音がエラーになってしまって、私の名前の「メンドーザ」を「メンドォザ」と入力しなければならなかったり。ミドルネームも含めると文字数が多くなるので、受付けてもらえないこともあります。それとコピー機などで日本語では表示されている機能が、英語では表示されていなくて使えないケースもあります。こういうふうに、システムがちょっとだけ足りていないなあ、と思うことがあります。

 あと、住むアパートを探すのが大変ですね。大家さんの側に、なんというか、外国人に対する偏見がまだありますね。これは、ひたちなかだけではなく日本全体がそうです。

外国人が、もっと楽に暮らせるようにという想いでサポートしています

 サポートを頼まれることが多いのは、出入国管理局、病院、免許試験場、市役所、銀行でのやりとりや手続き。他に、食物アレルギーがある人や宗教上の理由で食べられないものがある人と一緒にスーパーに行って、食材の成分表示を確認しながら、買い物の手伝いをすることもあります。

 日本語が出来ないために、日常生活に困っていたり不安があったりする外国人が、もっと楽に暮らせるようにサポートとしたいという想いで会社を設立しました。たとえば、年金や保険など何かを申請する時に、書類が日本語でしか書かれていないと、外国人はどこに何を記入したらよいかがわかりません。英語バージョンや、日英の用語の対照表のようなものがあれば便利だろうなと思います。それと、窓口の方の敬語は、外国人にとっては、別な言語に感じられるでしょうね。

 公的機関から届く郵便も、日本語が読めないと、宣伝のダイレクトメールと区別がつきません。先日も、年金関係のハガキを捨ててしまったという顧客がいました。どこかに「これは大切なものです。捨ててはいけません」というような英語の記載があればいいのに、と思いました。

翻訳者・通訳者として、外国人をサポートする機会を増やしていきたいです。

 時々、建物や公共の施設の案内看板などで使われている英語が、あまりいい英訳ではないことに気がつきます。外国人同士でも、話題になることがあります。

 今は、WEBサイトでも簡単に翻訳ができますが、気をつけないと外国人に伝わらないこともあります。たとえば、曜日。日本人なら、月・火・水で通じるかもしれませんが、「曜日」とつけないと、外国人にとっては、Moon・Fire・Water (笑)。こういうことも含めて、翻訳や通訳はネイティブ・スピーカーがやるべきだと思います。翻訳も通訳もプロフェッショナルなスキルで、正確にコミュニケーションするには、いろんなことを知っていることが大切だからです。

 私の会社を、もっと知ってもらって、市役所や出入国管理局などで困っている外国人を、常にサポートできるといいなと思っています。

 時折、笑い声のあがる楽しいインタビューでした。日本に暮らす外国人の方たちが、どんなことを感じているのか、示唆に富んだお話を伺うことができました。「少しだけシステムが足りていない」という言葉に、システムだけではなく、私たち日本人の、あと少しの心遣いで補えることもあるのでは、と考えさせられる時間でもありました。

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