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【インタビュー】「茨城アジア教育基金」を支える会

水戸市国際交流センターでは、国際交流団体の活動を紹介するために、「国際交流団体活動紹介展」を毎年実施しております。1 年を通して、様々な団体の活動を紹介するパネルを、当センター2 階のロビーに設置しています。

今回は、紹介展に参加いただいている団体の一つである『「茨城アジア教育基金」を支える会』を紹介します。インタビューさせていただいたのは、同会事務局の舩山悦子(ふなやまえつこ)さんです。

 

団体概要

『「茨城アジア教育基金」を支える会』

設立時期 1985年4月17日

活動地域 茨城県内及び支援国

活動頻度 月/1回

発 行 物 SAEFI通信

会 員 数 111名

会 費

 活動会員

 1グループ

 30,000円/年

 個人 一口

 5,000円/年

 賛助会員

 法人 一口

 10,000円/年

 個人 一口

 3,000円/年

団体の設立経緯

 初代事務局長の中川紀子先生が、社団法人国際婦人教育振興会(現、一般社団法人国際女性教育振興会)でタイ研修に行きました。そこで、当時のタイ国の都市と農村部の格差、多くの不就学児、都市に集中するスラムの劣悪な環境などの問題を目の当たりにしました。帰国後の報告会でその現状を伝え、先生自身その状況に対して自分に何ができるかと考えました。また、報告会に参加した方々も先生と同じ思いを持ち、この会が始まりました。

 その後、タイのことをもっと多くの人に知ってもらうため、タイの映画「田舎の教師」の上映会を県内各地で行いました。約12,000人の方が映画を観に来てくれて、その収益金で「茨城アジア教育援助基金」が1985年に設立されました。その後、1989年に『「茨城アジア教育基金」を支える会』に名称を変更しました。

会員について

 会員は、現在正会員が13人、賛助会員が26人、グループ会員が3グループで72人います。(日立市、水戸市、つくば市)

 会の運営資金やラオスでの事業費は、会費や皆様方からの寄付で賄っています。

活動内容について

 1985年~2000年くらいまでは、タイへの支援を実施していました。1995年にラオスへの支援が始まってからはラオスに重きを置いています。経済成長に伴いタイの状況が良くなってきたこと、それに比べてラオスは30年に亘る内戦のため、全国的に教員が不足し正式な教員養成課程を経ない教師が30%もいる状況でした。そのため、教育の質や技術を改善するための支援が必要と考え、同国への支援に変わりました。

【文庫活動から図書館活動へ】

文庫活動は、 会として最初に実施した活動です。段ボール11箱分の図書を購入し訳語を貼り、タイの小学校に贈りました。そして、巡回図書として色々な小学校を巡回しました。その後、旧郵政省からの補助を受けることになり、タイ東北部の56校の小学校に図書室を設置することになりました。これが図書館活動です。旧郵政省の9年間にわたる、3,000万円を超えるバックアップは、私たちの活動の弾みになりました。

 シャンティ国際ボランティア会(SVA)が実施している「絵本を贈る運動」にも協力しています。本は視野を広げ、好奇心を育て、自ら考え未来を拓く力を与えてくれます。しかし、ラオスの子どもたちが手にする本は圧倒的に少ないです。教室の片隅に図書コーナーを設けたり、車での移動図書館を実施して、本を読む機会を増やしています。また、茨城県立竜ケ崎第二高等学校と協働で幼稚園向けの絵本作りもしています。絵本作家の指導の下、アプリを利用し絵本を作ってもらい、私たちがラオス語に訳して届けるということを行っています。ただ、コロナの影響で、2年ほど活動が止まっています。

【幼児教育ワークショップ】

 ラオスの幼稚園[1]の教員を集めて、子どもたちへの指導の仕方や教材の作り方を教えました。また、ラオスには音楽と体育の授業がなく、現地から音楽指導の方法を教えてほしいとの要望があったので、ピアニカやリズムのとりかたなどについて教えました。しかし、日本から専門家として派遣していた方が亡くなってしまったので、ここ数年は実施できていません。

 今までは、ワークショップを当会で自主的にやってきましたが、現在はSVAに委託しています。ただ、これからも私たちにできることはやっていきたいと考えています。当会としての状況は厳しいですが、知恵を絞って今までの活動を無駄にしないで続けられるような支援をしていきたいです。

[1] ラオスの小学校には、就学率向上を図るために、就学前教室(幼稚園)が併設されている。

 

 

 

【海外研修員受け入れ事業】  

 茨城県からの補助金で10年間実施し、タイから6人、ラオスから7人の幼稚園の先生が、常総市の幼稚園で1年間研修を受けました。第1回目の研修員だったスパポーンさん(ラオス)は、日本式の教育に感銘を受けて、その経験を活かして自分で学校を作りました。最初は小さな幼稚園を設立しましたが、今は幼稚園から高校までの学園になり、600人ほどの生徒がいるそうです。その学園のアピールポイントは、小学校の修学旅行先が日本だということです。茨城には今まで3回修学旅行に来ていますが、ここ2年間はコロナの影響で実施できていません。子どもたちが茨城に滞在する期間は、当会もお世話をしますが、会員の高齢化も進み今後できるかどうかが分からない状況です。

【幼児教育教本発行】

 自治体国際協力促進事業の支援を受け、ラオス国指導者のための幼児教育教本を作成しました。ラオス国の識字率向上および幼児教育の充実、質の向上を図るために、日本人及びラオス人専門家による共同研究会を開催し、内容の充実を図り、また、絵やイラストを多く用い、見てわかるように工夫しました。ワークショップで教本の用い方を伝達し、ラオス全県に配布しました。併せて、2人の研修員を受け入れ、常総市の幼稚園で学びました。

 

 

【幼児用教材作成】 

  幼児用の教材の作成をしています。布でサイコロを作ったり、エプロンシアター[2]を何百枚も作りました。水戸女子高等学校に協力していただいて、作ったこともあります。「大きなかぶ」や「三匹のやぎのがらがらどん」など、色々なタイトルのエプロンシアターを作りました。しかし、現地の人々はその物語やエプロンシアター自体を知らない先生も多いので、それらの教材が定着した学校がどれくらいあるのか分からない状態です。それでも、エプロンシアターの人気は高く、今でも寄贈の要望はあります。

[2] エプロンを使った人形劇。エプロンを舞台にして、フェルトで作った人形などを動かして、劇を上演します。

【スタディツアー】 

 年に1回現地を訪れていますが、今はコロナで行くことができません。参加メンバーは当会の会員ですが、会員以外の方も参加できます。スタディツアーの目的は、現地の様子確認や子どもたちや地域の方々との交流です。

 

 

【クラフト販売】 

 ラオスには50の民族がいます。それぞれの民族により刺繍に特徴があります。ただ、近年刺繍のような手の込んだ手芸品を作る人が少なくなってきています。そういう状況の中で、私たちはラオスの伝統工芸を守り、作り手の収入につながるよう、現地で手芸品を購入し、当会が出店及び参加するイベントで販売しています。今でも各家の庭先に機織機があり、織っている人がいます。電気が通っていない地域では、日の出とともに織り始めて日の入りとともに作業を終わりにします。

【コロナ禍での活動及び現地の様子】 

 コロナで活動の制限を受けています。現地にも行けないし、イベントもないのでクラフトも売れず、色々な活動が停滞しています。そのような状況の中でも役員会を行ったり、茨城の海岸線をきれいにする活動に参加したりしました。また、絵本に訳語を貼ってSVAに届ける活動もしています。当会のグループ会員が、外国人市民向けの日本語教室や生け花教室、料理教室を開催し、日本在住の外国人市民への支援を行っています。

 ラオスのコロナの感染状況ですが、すぐに空港や道路のシャットダウンが始まったので、コロナが国内に入ってくるのが遅かったです。今年の春ぐらいから規制が緩和され、タイとラオスの国境から人の往来があり、感染が爆発的に広まりました。しかしすぐシャットダウンが行われました。学校も半年ぐらい休校するなど感染対策を徹底しています。しかし、授業の遅れをどうやって取り戻すかが、今ラオスの教育省の課題だそうです。

 子どもたちは休校の間、家や農業の手伝いをしています。それが続くと、親は子どもを頼りにしてしまうので、学校が再開されたときに、子どもが来なくなってしまう可能性があります。学校の教員が、親に子どもを学校に通わせるようお願いをして説得したにもかかわらず、また逆戻りしてしまう懸念があります。山岳地方ではその傾向があります。例えば、学校を建てる時も、全部こちらで準備してしまうと村人の意識が変わらないので、村人を巻き込んで、自分たちも参加して作るという意識を持たせて協力してもらいます。2015年に贈呈したサムスム小学校でも、整地の段階から協力を仰いだ結果、完成後も学校と村人の連携ができ、協力体制が続いています。

 日本の学校には給食がありますが、ラオスの学校には給食があるところとないところがあります。給食がないところは、昼休みが2時間あり、子どもたちは家に帰って食べます。

【団体としての今後の抱負】

 教育支援を長年やってきたので、その活動をどのようにすればこれからも続けていけるかを、SVAの協力を得ながら考えていきたいです。また、会員を増やすにはどうしたらよいかという課題にも取り組んでいこうと思います。

 教育に恵まれない国や民族、子どもたちについて伝えることが、私たちにできる使命だと思います。今は、インターネットで世界のことがわかりますが、学校や子どもたちの現実は、実際に行ってみないと分かりませんし、そういうことを発信できることが当会の強みかなと思います。

【国際協力・国際交流に興味のある方へのメッセージ】

 多くのことに関心を持って、情報をキャッチして、あなたにできることから行動してください。是非、私たちに力を貸してください。

【入会方法】

「茨城アジア教育基金」を支える会 – 入会のご案内 (saefi.org)

【問合せ先】

 事務局 舩山 悦子

TEL & FAX  029-259-5161

Email  info@saefi.org

HP 「茨城アジア教育基金」を支える会 (saefi.org)

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